2012年12月31日月曜日

国際課税ミニテスト(24-18)

 我が国におけるタックスヘイブン対策税制に関して、適切なものはいくつあるか?

24-18-1 特定外国子会社等の主たる事業が、株式等の保有を主たる目的とするものであっても、被統括会社である内国法人及び外国法人の統括業務を行う場合には、事業基準を満たすものとされる。

24-18-2 統括業務は3以上の被統括会社を統括するものでなければならない

24-18-3 「統括会社」とは、1の内国法人によってその発行済株式等の全部を直接又は間接に保有されている特定外国子会社等で、①2以上の被統括会社を有しその被統括会社に対して統括業務を行っていること、②その本店所在地国において統括業務にかかる固定施設及びその統括業務に専ら従事する者を有することの要件を満たすものをいう。

24-18-4 「事業持株会社」とは、統括会社のうち株式等の保有を主たる事業とするものをいい、その事業年度終了時において有する被統括会社の株式等の貸借対照表上の帳簿価格の合計額が、総資産額の100分の50に相当する金額を超えるものをいう。

24-18-5 特定外国子会社等が適用除外基準を満たすことにより会社単位での合算課税制度が適用されない場合でも、不動産や預貯金から生じる利益である「特定所得」を有するときは「特定所得」は合算の対象となる。
















24-18-1 特定外国子会社等の主たる事業が、株式等の保有を主たる目的とするものであっても、被統括会社である内国法人及び外国法人の統括業務を行う場合には、事業基準を満たすものとされる。

 誤り
 被統括会社は外国法人に限られる。

 「株式等若しくは債券の保有、工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるもの(これらの権利に関する使用権を含む。)若しくは著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む。)の提供又は船舶若しくは航空機の貸付け(次項において「特定事業」という。)を主たる事業とするもの(株式等の保有を主たる事業とする特定外国子会社等のうち、当該特定外国子会社等が他の外国法人の事業活動の総合的な管理及び調整を通じてその収益性の向上に資する業務として政令で定めるもの(以下この項において「統括業務」という。)を行う場合における当該他の外国法人として政令で定めるものの株式等の保有を行うものとして政令で定めるもの(以下この項において「事業持株会社」という。)を除く。)以外のもの」(措法66の6③)

 「被統括会社(政令で定める他の外国法人)」は、次に掲げる外国法人で、当該外国法人の発行済株式等のうちに特定外国子会社等(当該外国法人に対して統括業務を行うものに限る。以下この項において同じ。)の有する当該外国法人の株式等の数又は金額の占める割合及び当該外国法人の議決権の総数のうちに当該特定外国子会社等の有する当該外国法人の議決権の数の占める割合のいずれもが100分の25以上であり、かつ、その本店所在地国にその事業を行うに必要と認められる当該事業に従事する者を有するもの(以下この条において「被統括会社」という。)とする。
 一  当該特定外国子会社等及び当該特定外国子会社等に係る法第66条の6第1項各号に掲げる内国法人並びに当該内国法人が当該特定外国子会社等に係る間接保有の株式等(同条第2項第3号に規定する間接に有するものとして政令で定める外国法人の株式の数又は出資の金額をいう。以下この号及び第7項第4号において同じ。)を有する場合における当該間接保有の株式等に係る前条第3項第1号に規定する他の外国法人又は同項第2号に規定する他の外国法人及び出資関連外国法人(以下この項において「判定株主等」という。)が外国法人を支配している場合における当該外国法人(以下この項において「子会社」という。)
 二  判定株主等及び子会社が外国法人を支配している場合における当該外国法人(次号において「孫会社」という。)
 三  判定株主等並びに子会社及び孫会社が外国法人を支配している場合における当該外国法人」(措令39の17②)

 「法人税法施行令第4条第3項の規定は、前項各号に掲げる外国法人を支配している場合について準用する」(措令39の17③)。


24-18-2 統括業務は3以上の被統括会社を統括するものでなければならない

 誤り
 3以上ではなくて2以上である。

 「統括業務(政令で定める業務)」は、「特定外国子会社等が被統括会社との間における契約に基づき行う業務のうち当該被統括会社の事業の方針の決定又は調整に係るもの(当該事業の遂行上欠くことのでき ないものに限る。)であつて、当該特定外国子会社等が2以上の被統括会社に係る当該業務を一括して行うことによりこれらの被統括会社の収益性の向上に資することとなると認められるもの」(措令39の17①)。


24-18-3 「統括会社」とは、一の内国法人によってその発行済株式等の全部を直接又は間接に保有されている特定外国子会社等で、①2以上の被統括会社を有しその被統括会社に対して統括業務を行っていること、②その本店所在地国において統括業務にかかる固定施設及びその統括業務に専ら従事する者を有することの要件を満たすものをいう。

 正しい
 なお、株式等の保有を主たる事業とする特定外国子会社等のうち、統括事業として、被統括会社の株式等の保有を行う統括会社は事業持株会社となり、事業基準を満たすことになる。

 「統括会社(政令で定める特定外国子会社等)」は、一の内国法人によつてその発行済株式等の全部を直接又は間接に保有されている特定外国子会社等で次に掲げる要件を満たすもの(以下この条において「統括会社」 という。)のうち、株式等の保有を主たる事業とするもの(当該統括会社の当該事業年度終了の時において有する当該統括会社に係る被統括会社の株式等の当該事業年度終了の時における貸借対照表に計上されている帳簿価額の合計額が当該統括会社の当該事業年度終了の時において有する株式等の当該貸借対照表に計上されている帳簿価額の合計額の100分の50に相当する金額を超える場合における当該統括会社に限る。)とする。
 一  当該特定外国子会社等に係る2以上の被統括会社に対して統括業務を行つていること。
 二  その本店所在地国に統括業務に係る事務所、店舗、工場その他の固定施設及び当該統括業務を行うに必要と認められる当該統括業務に従事する者(専ら当該統括業務に従事する者に限るものとし、当該特定外国子会社等の役員及び当該役員に係る法人税法施行令第72条各号に掲げる者を除く。)を有していること」 (措令39の17④)。


24-18-4 「事業持株会社」とは、統括会社のうち株式等の保有を主たる事業とするものをいい、その事業年度終了時において有する被統括会社の株式等の貸借対照表上の帳簿価格の合計額が、総資産額の100分の50に相当する金額を超えるものをいう。

 誤り
 総資産ではなく、株式等の帳簿価額の合計額である(措令39の17④括弧書き)。
 当該統括会社が事業年度終了の時において有する被統括会社株式の帳簿価額の合計額が、統括会社の全保有株式簿価の50%を超える場合に限る。


24-18-5 特定外国子会社等が適用除外基準を満たすことにより会社単位での合算課税制度が適用されない場合でも、不動産や預貯金から生じる利益である「特定所得」を有するときは「特定所得」は合算の対象となる。

 誤り
 不動産から生じる利益は、特定所得とはならない(措法66の6④)。

第1項各号に掲げる内国法人に係る特定外国子会社等が、平成22年4月1日以後に開始する各事業年度において前項の規定により第1項の規定を適用しない適用対象金額を有する場合において、当該各事業年度に係る次に掲げる金額(第一号から第五号までに掲げる金額については、当該特定外国子会社等が行う事業(特定事業を除く。)の性質上重要で欠くことのできない業務から生じたものを除く。以下この項において「特定所得の金額」という。)を有するときは、当該各事業年度の特定所得の金額の合計額のうちその内国法人の有する当該特定外国子会社等の直接及び間接保有の株式等の数に対応するものとしてその株式等の請求権の内容を勘案して政令で定めるところにより計算した金額に相当する金額は、その内国法人の収益の額とみなして当該各事業年度終了の日の翌日から2月を経過する日を含むその内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する。
 一  剰余金の配当等の額(当該特定外国子会社等の有する他の法人の株式等の数又は金額のその発行済株式又は出資(その有する自己の株式等を除く。第四号において「発行済株式等」という。)の総数又は総額のうちに占める割合が、当該剰余金の配当等の額の支払に係る効力が生ずる日において、100分の10に満たない場合における当該他の法人から受けるものに限る。以下この号において同じ。)の合計額から当該剰余金の配当等の額を得るために直接要した費用の額の合計額及び当該剰余金の配当等の額に係る費用の額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した残額
 二  債券の利子の額の合計額から当該利子の額を得るために直接要した費用の額の合計額及び当該利子の額に係る費用の額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した残額
 三  債券の償還金額(買入消却が行われる場合には、その買入金額)がその取得価額を超える場合におけるその差益の額の合計額から当該差益の額を得るために直接要した費用の額の合計額及び当該差益の額に係る費用の額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した残額
 四  株式等の譲渡(金融商品取引法第2条第16項に規定する金融商品取引所の開設する市場においてする譲渡その他政令で定めるものに限る。以下この号及び次号において同じ。)に係る対価の額(当該特定外国子会社等の有する他の法人の株式等の数又は金額のその発行済株式等の総数又は総額のうちに占める割合が、当該譲渡の直前において、100分の10に満たない場合における当該他の法人の株式等の譲渡に係る対価の額に限る。以下この号において同じ。)の合計額から当該株式等の譲渡に係る原価の額として政令で定めるところにより計算した金額の合計額及び当該対価の額を得るために直接要した費用の額の合計額を控除した残額
 五  債券の譲渡に係る対価の額の合計額から当該債券の譲渡に係る原価の額として政令で定めるところにより計算した金額の合計額及び当該対価の額を得るために直接要した費用の額の合計額を控除した残額
 六  特許権、実用新案権、意匠権若しくは商標権又は著作権の使用料の合計額から当該使用料を得るために直接要した費用の額の合計額を控除した残額
 七  船舶又は航空機の貸付けによる対価の額の合計額から当該対価の額を得るために直接要した費用の額の合計額を控除した残額

2012年12月22日土曜日

国際課税ミニテスト(24-17)

 我が国におけるタックスヘイブン対策税制に関して、適切なものはいくつあるか?

24-17-1 タックスヘイブン対策税制の適用除外要件として、4つの適用除外要件が定められているが、1つでも満たせば適用が除外される。

24-17-2 「事業基準」とは、特定外国子会社等が「特定事業」を主たる事業とするものでないことをいい、特定事業とは不動産の賃貸や預貯金の保有などの受動的事業を指す

24-17-3 「実体基準」とは、特定外国子会社等が主たる事業を行うのに必要と認められる事務所・店舗・工場その他の固定施設をタックスヘイブンに有し、かつ必要な従業員を置いていることをいう。

24-17-4 「管理支配基準」とは、特定外国子会社等が実体基準を満たしつつも内国法人に管理支配されていることをいう。

24-17-5 その他の基準である、「非関連者基準」と「所在地国基準」は、営む事業の種類によっていずれかが適用される。
















24-17-1 タックスヘイブン対策税制の適用除外要件として、4つの適用除外要件が定められているが、1つでも満たせば適用が除外される。

 誤り
 適用対象外となるためには、「事業基準」、「実体基準」、「管理支配基準」、「所在地国基準または非関連者基準」の4要件全てを満たしていなければならない。

 「第1項の規定は、同項各号に掲げる内国法人に係る特定外国子会社等で、株式等若しくは債券の保有、工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるもの(これらの権利に関する使用権を含む。)若しくは著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む。)の提供又は船舶若しくは航空機の貸付け(次項において「特定事業」という。)を主たる事業とするもの(株式等の保有を主たる事業とする特定外国子会社等のうち、当該特定外国子会社等が他の外国法人の事業活動の総合的な管理及び調整を通じてその収益性の向上に資する業務として政令で定めるもの(以下この項において「統括業務」という。)を行う場合における当該他の外国法人として政令で定めるものの株式等の保有を行うものとして政令で定めるもの(以下この項において「事業持株会社」という。)を除く。)以外のものが、その本店又は主たる事務所の所在する国又は地域においてその主たる事業(事業持株会社にあつては、統括業務とする。以下この項において同じ。)を行うに必要と認められる事務所、店舗、工場その他の固定施設を有し、かつ、その事業の管理、支配及び運営を自ら行つているものである場合であつて、各事業年度においてその行う主たる事業が次の各号に掲げる事業のいずれに該当するかに応じ当該各号に定める場合に該当するときは、当該特定外国子会社等のその該当する事業年度に係る適用対象金額については、適用しない
一  卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業、保険業、水運業又は航空運送業 その事業を主として当該特定外国子会社等に係る第40条の4第1項各号に掲げる居住者、当該特定外国子会社等に係る第1項各号に掲げる内国法人、当該特定外国子会社等に係る第68条の90第1項各号に掲げる連結法人その他これらの者に準ずる者として政令で定めるもの以外の者との間で行つている場合として政令で定める場合
二  前号に掲げる事業以外の事業 その事業を主として本店又は主たる事務所の所在する国又は地域(当該国又は地域に係る水域で政令で定めるものを含む。)において行つている場合として政令で定める場合」(措法66条の6③)


24-17-2 「事業基準」とは、特定外国子会社等が「特定事業」を主たる事業とするものでないことをいい、特定事業とは不動産の賃貸や預貯金の保有などの受動的事業を指す

 誤り
 「特定事業」とは、株式等若しくは債券の保有、工業所有権等の提供又は船舶若しくは航空機の貸付けを指す。また、統括会社(事業持株会社)は適用除外となる。(措法66条の6③、措令39の17)。
 これらが受動的事業であることは確かであるが、「不動産の賃貸」と「船舶若しくは航空機の貸付け」、「預貯金の保有」と「株式等若しくは債券の保有」は文理解釈上異なる概念である。


24-17-3 「実体基準」とは、特定外国子会社等が主たる事業を行うのに必要と認められる事務所・店舗・工場その他の固定施設をタックスヘイブンに有し、かつ必要な従業員を置いていることをいう。

 誤り
 「本店又は主たる事務所の所在する国又は地域においてその主たる事業(事業持株会社にあつては、統括業務とする。以下この項において同じ。)を行うに必要と認められる事務所、店舗、工場その他の固定施設を有し」(措法66条の6③)ていれば良く、必要な従業員を置いていることまでは求められていない。


24-17-4 「管理支配基準」とは、特定外国子会社等が実体基準を満たしつつも内国法人に管理支配されていることをいう。

 誤り
 内国法人に係る特定外国子会社等がその本店又は主たる事務所の所在する国又は地域において、「事業の管理、支配及び運営を自ら行つている」(措法66条の6③)とは、「当該特定外国子会社等の株主総会及び取締役会等の開催、役員としての職務執行、会計帳簿の作成及び保管等が行われている場所並びにその他の状況を勘案の上行うものとする。この場合において、例えば、当該特定外国子会社等の株主総会の開催が本店所在地国等以外の場所で行われていること、当該特定外国子会社等が、現地における事業計画の策定等に当たり、当該内国法人と協議し、その意見を求めていること等の事実があるとしても、そのことだけでは、当該特定外国子会社等が管理支配基準を満たさないことにはならないことに留意する」(措通66の6-16)。
 「管理支配基準」は「実体基準」と独立したものであり、内包しているわけではない。


24-17-5 その他の基準である、「非関連者基準」と「所在地国基準」は、営む事業の種類によっていずれかが適用される。

 正しい
 「主たる事業が次の各号に掲げる事業のいずれに該当するかに応じ当該各号に定める場合に該当」(措法66条の6③)すれば良い。
 「非関連者基準」とは、特定外国子会社等の主たる事業が「卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業、保険業、水運業又は航空運送業」である場合、その事業を主として非関連者との間で行っていることをいう(措法66条の6③一)。
 「所在地国基準」とは、「非関連者基準」が適用される業種以外の業種で、「その事業を主として本店又は主たる事務所の所在する国又は地域(当該国又は地域に係る水域で政令で定めるものを含む。)において行つている場合として政令で定める場合」(措法66条の6③二)をいう。

国際課税ミニテスト(24-16)

 外国法人Z社(税負担割合15%)は、特定外国子会社であり、適用対象金額が算出される法人である。甲、乙及び丙は内国法人であり、それぞれ30%、5%、20%のZ社株式を保有している。
 課税対象金額が算出される内国法人を挙げよ。
















甲及び丙(乙が「同族株主グループ」に該当する場合には乙も対象となる)

 「次に掲げる内国法人に係る外国関係会社のうち、本店又は主たる事務所の所在する国又は地域におけるその所得に対して課される税の負担が本邦における法人の所得に対して課される税の負担に比して著しく低いものとして政令で定める外国関係会社に該当するもの(「特定外国子会社等」)が、昭和53年4月1日以後に開始する各事業年度において適用対象金額を有する場合には、その適用対象金額のうちその内国法人の有する当該特定外国子会社等の直接及び間接保有の株式等の数に対応するものとしてその株式等の請求権(剰余金の配当等、財産の分配その他の経済的な利益の給付を請求する権利をいう。)の内容を勘案して政令で定めるところにより計算した金額(「課税対象金額」)に相当する金額は、その内国法人の収益の額とみなして当該各事業年度終了の日の翌日から2月を経過する日を含むその内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する。
一  その有する外国関係会社の直接及び間接保有の株式等の数の当該外国関係会社の発行済株式又は出資(当該外国関係会社が有する自己の株式等を除く。)の総数又は総額のうちに占める割合(「直接及び間接の外国関係会社株式等の保有割合」)が100分の10以上である内国法人
二  直接及び間接の外国関係会社株式等の保有割合が100分の10以上である一の同族株主グループに属する内国法人(前号に掲げる内国法人を除く。) 」(措法66条の6①)。

 これを受けて、「政令で定める外国関係会社」は、「
一  法人の所得に対して課される税が存在しない国又は地域に本店又は主たる事務所を有する外国関係会社(措法66条の6②一)
二  その各事業年度の所得に対して課される租税の額が当該所得の金額の100分の20以下である外国関係会社」(措令39条の14①)を意味する。

 なお、「同族株主グループ」とは、「外国関係会社の株式等を直接又は間接に保有する者のうち、一の居住者又は内国法人及び当該一の居住者又は内国法人と政令で定める特殊の関係のある者(外国法人を除く。)をいう」(措法66条の6②六)。

 また、「一の居住者又は内国法人と政令で定める特殊の関係のある者」は、次に掲げる個人又は法人とする。
一  次に掲げる個人
 イ 居住者の親族
 ロ 居住者と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
 ハ 居住者の使用人
 ニ イからハまでに掲げる者以外の者で居住者から受ける金銭その他の資産によつて生計を維持しているもの
 ホ ロからニまでに掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族
 ヘ 内国法人の役員及び当該役員に係る法人税法施行令第72条各号に掲げる者
二  次に掲げる法人
 イ 一の居住者又は内国法人(当該居住者又は内国法人と前号に規定する特殊の関係のある個人を含む。以下この項において「居住者等」という。)が他の法人を支配している場合における当該他の法人
 ロ 一の居住者等及び当該一の居住者等とイに規定する特殊の関係のある法人が他の法人を支配している場合における当該他の法人
 ハ 一の居住者等及び当該一の居住者等とイ及びロに規定する特殊の関係のある法人が他の法人を支配している場合における当該他の法人
 ニ 同一の者とイからハまでに規定する特殊の関係のある二以上の法人のいずれかの法人が一の居住者等である場合における当該一の居住者等以外の法人」(措令39条の16⑥)

 さらに、「法人税法施行令第4条第3項の規定は、前項第2号イからハまでに掲げる他の法人を支配している場合について準用する」(措令39条の16⑦)。

 「他の会社を支配している場合」とは、「次に掲げる場合のいずれかに該当する場合をいう。
一  他の会社の発行済株式又は出資(その有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の100分の50を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合
二  他の会社の次に掲げる議決権のいずれかにつき、その総数(当該議決権を行使することができない株主等が有する当該議決権の数を除く。)の100分の50を超える数を有する場合
 イ 事業の全部若しくは重要な部分の譲渡、解散、継続、合併、分割、株式交換、株式移転又は現物出資に関する決議に係る議決権
 ロ 役員の選任及び解任に関する決議に係る議決権
 ハ 役員の報酬、賞与その他の職務執行の対価として会社が供与する財産上の利益に関する事項についての決議に係る議決権
ニ 剰余金の配当又は利益の配当に関する決議に係る議決権
三  他の会社の株主等(合名会社、合資会社又は合同会社の社員(当該他の会社が業務を執行する社員を定めた場合にあつては、業務を執行する社員)に限る。)の総数の半数を超える数を占める場合」(法令4③)である。

国際課税ミニテスト(24-15)

 外国法人Zが我が国におけるタックスヘイブン対策税制の「外国関係会社」に該当するか答えよ。なお、甲・乙・丙は内国法人、A・Zは外国法人である。

24-15-1 内国法人甲がZの株式を25%保有。内国法人乙がZの株式を24%保有。

24-15-2 内国法人甲がZの株式を5%保有。内国法人乙がZの株式を20%保有。内国法人丙が外国法人Aの株式を30%保有し、外国法人AがZの株式を80%保有。

24-15-3 内国法人甲が外国法人Aの株式を70%保有し、外国法人AがZの株式を80%保有。

24-15-4 内国法人甲が外国法人Aの株式を70%保有し、外国法人AがZの株式を70%保有。

24-15-5 内国法人甲がZの株式を20%保有。内国法人甲が外国法人Aの株式を70%保有し、外国法人AがZの株式を40%保有。




















24-15-1  該当しない(25%+24%=49%<50%)

24-15-2  該当しない(5%+20%+30%×80%=49%<50%)

24-15-3  該当する (70%×80%=56%>50%)

24-15-4  該当しない(70%×70%=49%<50%)

24-15-5  該当しない(20%+70%×40%=48%<50%)

「外国関係会社」とは、「外国法人で、その発行済株式又は出資(その有する自己の株式等を除く。)の総数又は総額のうちに居住者及び内国法人並びに特殊関係非居住者(措令39条の14③)が有する直接及び間接保有の株式等の数の合計数又は合計額の占める割合が100分の50を超えるものをいう」(措法66条の6②一)。

 また、「直接及び間接保有の株式等の数」とは、「個人又は内国法人が直接に有する外国法人の株式の数又は出資の金額及び他の外国法人を通じて間接に有するものとして政令で定める当該外国法人の株式の数又は出資の金額の合計数又は合計額をいう」(措法66条の6②三)。

 これを受けて「間接に有するものとして政令で定める外国法人の株式の数又は出資の金額」は、外国法人の発行済株式等に、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める割合(当該各号に掲げる場合のいずれにも該当する場合には、当該各号に定める割合の合計割合)を乗じて計算した株式等の数又は金額とする。
 一  当該外国法人の株主等である他の外国法人(以下この号において「他の外国法人」という。)の発行済株式等の全部又は一部が個人又は内国法人により所有されている場合 当該個人又は内国法人の当該他の外国法人に係る持株割合(その株主等の有する株式等の数又は金額が当該株式等の発行法人の発行済株式等のうちに占める割合をいう。以下この項において同じ。)に当該他の外国法人の当該外国法人に係る持株割合を乗じて計算した割合(当該他の外国法人が2以上ある場合には、2以上の当該他の外国法人につきそれぞれ計算した割合の合計割合)
二  当該外国法人と他の外国法人(その発行済株式等の全部又は一部が個人又は内国法人により所有されているものに限る。以下この項において「他の外国法人」という。)との間に1又は2以上の外国法人(以下この項において「出資関連外国法人」という。)が介在している場合であつて、当該個人又は内国法人、当該他の外国法人、出資関連外国法人及び当該外国法人が株式等の所有を通じて連鎖関係にある場合 当該個人又は内国法人の当該他の外国法人に係る持株割合、当該他の外国法人の出資関連外国法人に係る持株割合、出資関連外国法人の他の出資関連外国法人に係る持株割合及び出資関連外国法人の当該外国法人に係る持株割合を順次乗じて計算した割合(当該連鎖関係が2以上ある場合には、当該2以上の連鎖関係につきそれぞれ計算した割合の合計割合) 」(措令39条の16③)。

2012年12月18日火曜日

調査の透明性と予見可能性を高める 民主党政権で国税通則法を大幅改正 来年1月施行【税務】

2012.12.18 

 税務調査の手続きなどを定め、「税法の一般法」とも呼ばれる国税通則法が11年11月、1962年の制定以来初めて大幅改正さ れ、来年1月に完全施行される。「税務調査の手続きの法整備が遅れている」と日本弁護士連合会などから指摘されていた中、政権が「納税者権利憲章の制定」 をマニフェストに掲げた民主党に交代したことが同法改正の大きなきっかけとなった。税務調査手続きの透明性や納税者の予見可能性を高めることが目的の今回 の改正だが、国税職員からは「調査件数は相当減ることになる」など改正の負の影響を危惧する声も聞かれる。

「納税者の権利を明確にするために『納税者権利憲章』を制定します」---。09年8月の衆院選に向けて民主党が作った「民主党政策集 INDEX2009」の税制の項目に、政府税調の設置、給付付き税額控除制度の導入、道路特定財源の一般財源化などとともに「納税者権利憲章」の制定の文 字が並んでいた。納税者の権利を守るための具体的な改革として、更正(事後的な納税額の増額、減額)の期間制限が国税庁と納税者とで差があることを見直す としている。

 民主党が政権を取った後の同年12月22日に閣議決定された「10年度税制改正大綱」にも「納税者の税制上の権利を明確にし、税制への信頼確保に資するものとして『納税者権利憲章(仮称)』を早急に制定する」と記された。

 さらに翌10年12月16日に閣議決定された「11年度税制改正大綱」になると、憲章策定とともに税務調査手続きの明確化や処分の理由説明の実施 など、今回の国税通則法改正につながる内容が納税環境整備の項目内に併記されるなど、納税者権利憲章制定と国税通則法の改正はセットで考えられるように なった。

 しかし、ある国税職員が「憲章という屋根の下で始まったが、その屋根はなくなってしまった」と話すように、憲章策定については野党・自民党の反対もあって結局見送られることになり、国税通則法改正だけが結果的に残ることになった。

 

 「納税者権利憲章」制定は見送り


国税通則法改正直前の11年10月11日の税制調査会の議事録を見ると、中野寛成・民主党税調会長代行が「更正の請求期間の延長や理由付記など、 納税者の権利を具現化する事項を早期に実施することによって、納税環境整備は相当前進する。言わば実が取れるとの判断に立って、憲章については断腸の思い ではあるが、今回は見送ることとした」と述べている。

 政権発足時の民主党の思惑とはずれが生じたものの、「権利憲章だけ制定しても絵に描いた餅になる。そういう意味では確かに実を取ったといえると思 う」と財務省主税局の担当者が評価する国税通則法改正。実際の法改正で変わった主な点は▽税務調査手続きの明確化▽更正の請求期間の延長▽処分の理由説明 ---などだが、現場の国税職員にとっては事務作業量増加を強いる「厄介者」という側面があることは否定できない。

 税務調査手続きについては、税務調査の事前通知と税務調査の終了の際の手続きが法制化された。現場の裁量に委ねられている部分があったうえに、こ れまでは税理士のみに伝えればよかったのが、調査対象本人にも伝えなければならなくなったため、手間は増えることになる。さらに、調査開始日時、調査開始 場所などだけではなく、調査の目的、調査対象税目、調査対象となる期間、調査対象となる帳簿書類など通知する内容についても細かく定められたのも特徴の一 つだ。

 調査終了の手続きも整備された。これまでは調査の結果、問題点が全くない場合は「調査結果についてのお知らせ」と題する書面を送付していたが、 「実際には調査に入って何の指導事項もないことは少なく、この書面を送付することはまれだった」(国税庁課税総括課)。しかし、今後は指導事項の有無に関 わらず、税目ごと、期間ごとに「更正決定等をすべきと認められない旨」を記した書面を納税者に交付しなければならなくなる。

 一方、調査の結果、何らかの問題点があった場合は、調査結果の内容を説明することが法定化され、さらに修正申告などを勧奨する場合は「修正申告を 出した場合、不服申し立てをすることはできないが、更正の請求をすることはできる」ことを説明するとともに、そのことを記載した書面を交付しなければなら ないと定められた。

 このほか、納税者にとって不利益な処分についてはすべて理由を説明しなければならなくなる。

 一連の改正について、国税庁課税総括課は「慣れ親しんだやり方ではないのに加えて、法律で定められるということで『従来以上に厳密にやらなければ いけない』という精神的な負担は大きくなるかもしれない。ただ、これまでやってきたことが極端に大きく変わるわけではないと思う」と話す。

 国税庁は今年8~9月に全国約5万6000人の職員が参加する研修を実施したほか、10月からは事前通知や修正申告勧奨時の書面交付といった新手 続きを先行実施している。少しでも早く新業務に慣れさせるのが狙いだが、東京国税局幹部は「法人、個人、大企業、中小企業など何を担当している部署かに よって異なるだろうが、概ね調査件数は2~3割は減ってしまうのではないか。慣れるまでにはしばらくの時間はかかるだろう」と顔をしかめる。

 民主党のマニフェストに端を発した国税通則法の大幅改正。中野氏は、納税者権利憲章の見送りについて述べた後、引き続き納税者の利益の保護と税務行政の適正かつ円滑な運営を確保する観点から、納税環境整備に向け検討を要請した。

 しかし、民主党政権がぐらつく中、「それらの先行きは不透明で、今後どうなるかは分からない」(財務省主税局)と税務当局は当惑気味。ある国税職員は「民主党のおかげで、税務調査の現場の困惑はしばらく続くということだけは明らか」とぼやく。

2012年12月16日日曜日

国際課税ミニテスト(24-14)

 外国子会社配当益金不算入制度の適用対象となるケースの、内国法人甲と外国法人Aの関係を述べよ。
















 内国法人甲が、外国法人Aの発行済株式等の25%以上の株式等を、配当等の支払義務が確定する日以前6月以上引き続き直接保有している。なお、持株比率25%は租税条約により変更されることがある(法法22の4⑤)。

 「内国法人が外国子会社(当該内国法人が保有しているその株式又は出資の数又は金額がその発行済株式又は出資(その有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の100分の25以上に相当する数又は金額となつていることその他の政令で定める要件を備えている外国法人をいう。)から受ける前条第1項第1号に掲げる金額(以下第3項までにおいて「剰余金の配当等の額」という。)がある場合には、当該剰余金の配当等の額から当該剰余金の配当等の額に係る費用の 額に相当するものとして政令で定めるところにより計算した金額を控除した金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない」(法法23の2①)。

 「法第23条の2第1項(外国子会社から受ける配当等の益金不算入)に規定する政令で定める要件は、次に掲げる割合のいずれかが100分の25以上であり、かつ、その状態が同項の内国法人が外国法人から受ける同項に規定する剰余金の配当等の額(以下この項及び次項において「剰余金の配当等の額」という。)の支払義務が確定する日(当該剰余金の配当等の額が法第24条第1項 (同項第3号に規定する資本の払戻しに係る部分を除く。)(配当等の額とみなす金額)の規定により法第23条第1項第1号(受取配当等の益金不算入)に掲げる金額とみなされる金額である場合には、同日の前日。以下この項において同じ。)以前6月以上(当該外国法人が当該確定する日以前6月以内に設立された法人である場合には、その設立の日から当該確定する日まで)継続していることとする。
 当該外国法人の発行済株式又は出資(その有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額(次号及び第4項において「発行済株式等」という。)のうちに当該内国法人が保有しているその株式又は出資の数又は金額の占める割合
 当該外国法人の発行済株式等のうちの議決権のある株式又は出資の数又は金額のうちに当該内国法人が保有している当該株式又は出資の数又は金額の占める割合」(法令22の4①)。

国際課税ミニテスト(24-13)

 外国子会社配当益金不算入制度に関して、適切なものはいくつあるか?

24-13-1 外国子会社配当益金不算入制度は、国際的な租税回避を防止するための制度である。

24-13-2 外国子会社から外国子会社配当益金不算入制度の対象となる配当を受領した場合、配当に対して課される外国源泉税等の額は、外国税額の控除の対象にならず損金算入もできない。

24-13-3 外国子会社配当益金不算入制度の導入に伴い、みなし外国税額控除が廃止された。

24-13-4 外国子会社から外国子会社配当益金不算入制度の対象となる配当100を受け取った場合、内国法人の益金不算入となる金額は95であり、差額の5は外国税とみなされる。
















24-13-1 外国子会社配当益金不算入制度は、国際的な租税回避を防止するための制度である。

 誤り
 外国子会社配当益金不算入制度は、内国法人が外国子会社から受けとる配当について、原則として課税しないというものである。間接外税控除に代わるものとして、平成21年度改正で導入された。
 外国子会社配当益金不算入制度と外国税額控除は、国際的な二重課税の排除が目的である。
 一方、国際的な租税回避を防止するための制度としては、移転価格税制(措法66の4)や過少資本税制(措法66の5)、過大支払利子税制(措法66の5の2)、外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制(措法66の6))が挙げられる。


24-13-2 外国子会社から外国子会社配当益金不算入制度の対象となる配当を受領した場合、配当に対して課される外国源泉税等の額は、外国税額の控除の対象にならず損金算入もできない。

 正しい
 「控除対象外国法人税の額」から除かれる「内国法人の法人税に関する法令の規定により法人税が課されないこととなる金額を課税標準として外国法人税に関する法令により課されるものとして政令で定める外国法人税の額」(法法69①括弧書き)の1つである。
 「法第23条の2第1項に規定する外国子会社から受ける同項に規定する剰余金の配当等の額(同条第2項の規定の適用を受けるものを除く。以下この号において同じ。)を課税標準として課される外国法人税の額(当該剰余金の配当等の額の計算の基礎となつた当該 外国子会社の所得のうち内国法人に帰せられるものとして計算される金額を課税標準として当該内国法人に対して課される外国法人税の額を含む。) 」(法令142の2⑦三)。

 内国法人が第23条の2第1項(外国子会社から受ける配当等の益金不算入)に規定する外国子会社から受ける同項に規定する剰余金の配当等の額(以下この条において「剰余金の配当等の額」という。)につき同項の規定の適用を受ける場合には、当該剰余金の配当等の額に係る外国源泉税等の額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない(法法39条の2)。


24-13-3 外国子会社配当益金不算入制度の導入に伴い、みなし外国税額控除が廃止された。

 誤り
 平成21年度改正で、外国子会社配当益金不算入制度の導入に伴い廃止されたのは間接外国税額控除である。


24-13-4 外国子会社から外国子会社配当益金不算入制度の対象となる配当100を受け取った場合、内国法人の益金不算入となる金額は95であり、差額の5は外国税とみなされる。

 誤り
 「内国法人が外国子会社から受ける前条第1項第1号に掲げる金額(以下第3項までにおいて「剰余金の配当等の額」という。)がある場合には、当該剰余金の配当等の額から当該剰余金の配当等の額に係る費用の額に相当するものとして政令で定めるところにより計算した金額を控除した金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない」(法法23の2①)。

 「法第23条の2第1項に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、剰余金の配当等の額の100分の5に相当する金額とする」(法令22の4②)。

 従って、配当100から控除額5を控除した95が益金不算入となる。差額の5は、当該事業年度の益金の額に算入されるのであって、損金の額に算入するわけではない(法法39条の2)。

国際課税ミニテスト(24-12)

 外国税額控除に関して、(イ)~(ニ)に入る語句は何か?

 控除対象外国法人税の額が控除限度額と地方税控除限度額との合計額を超える部分を(イ)といい、(ロ)年間の繰越しが認められている。
 逆に、控除対象外国法人税の額が控除限度額と地方税控除限度額との合計額に満たない部分を(ハ)といい、(ニ)年間の繰越しが認められている。
















(イ)控除限度超過額
(ロ)3
(ハ)控除余裕額
(ニ)3


 控除限度超過額とは、内国法人が各事業年度において納付することとなる控除対象外国法人税の額が当該事業年度の国税の控除限度額と地方税の控除限度額との合計額を超える場合におけるその超える部分の金額に相当する金額をいう(法令144⑦)。

内国法人が各事業年度において納付することとなる控除対象外国法人税の額が当該事業年度の控除限度額と地方税控除限度額として政令で定める金額との合計額を超える場合において、前3年内事業年度の控除限度額のうち当該事業年度に繰り越される部分として政令で定める金額(以下この項及び第11項において「繰越控除限度額」という。)があるときは、政令で定めるところにより、その繰越控除限度額を限度として、その超える部分の金額を当該事業年度の所得に対する法人税の額から控除する(法法69②)。

 控除余裕額とは、内国法人が各事業年度において納付することとなる控除対象外国法人税の額が当該事業年度の国税の控除限度額に満たない場合における当該国税の控除限度額から当該控除対象外国法人税の額を控除した金額に相当する金額をいう(法令144⑤)。

 内国法人が各事業年度において納付することとなる控除対象外国法人税の額が当該事業年度の控除限度額に満たない場合において、その前3年内事業年度において納付することとなった控除対象外国法人税の額のうち当該事業年度に繰り越される部分として政令で定める金額(以下この項及び第11項において「繰越控除対象外国法人税額」という。)があるときは、政令で定めるところにより、当該控除限度額から当該事業年度において納付することとなる控除対象外国法人税の額を控除した残額を限度として、その繰越控除対象外国法人税額を当該事業年度の所得に対する法人税の額から控除する(法法69③)。

国際課税ミニテスト(24-11)

 外国税額控除に関して、(イ)~(ハ)に入る数値はいくらか?

 甲社の全世界所得金額が400、そのうち国外所得金額が100、我が国の法人税率が30%であった場合、外国税額の控除限度額を計算すると(イ)である。甲社が国外所得金額100に対して40の外国法人税を納付したとすると、甲社の外国税額の控除の額は(ロ)であり、日本で納税する額は(ハ)である。
















 外国税額の控除については、「内国法人が各事業年度において外国法人税を納付することとなる場合には、当該事業年度の所得の金額につき第66条第1項から第3項まで(各事業年度の所得に対する法人税の税率)の規定を適用して計算した金額のうち当該事業年度の所得でその源泉が国外にあるものに対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額を限度として、その外国法人税の額を当該事業年度の所得に対する法人税の額から控除する」(法法69①)。

 これを受けて、控除限度額の計算は、「法第69条第1項(外国税額の控除)に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、同項の内国法人の各事業年度の所得に対する法人税の額に、当該事業年度の所得金額のうちに当該事業年度の国外所得金額の割合を乗して計算した金額とする」(法令142①)。

 内国法人の各事業年度の所得に対する法人税の額:400×30%=120
 当該事業年度の所得金額:400
 当該事業年度の国外所得金額:100

 (イ)控除限度額:400×30%×(100/400)=30
 (ロ)外国税額控除額:30(外国法人税額40>控除限度額30)
 (ハ)日本での納税額:400×30%-30=90

国際課税ミニテスト(24-10)

 外国税額控除に関して、適切なものはいくつあるか?

24-10-1 我が国の外国税額の控除の態様は、①直接外国税額控除、②間接外国税額控除、③みなし外国税額控除の3つに大別される。このうち、租税特別措置法に規定されていたみなし外国税額控除は、平成21年度改正で廃止された。

24-10-2 外国税額の控除の対象となる税は、租税条約の規定を根拠とし、外国又はその地方公共団体により、法人(個人)の所得に課される税である。

24-10-3 納税者と外国又はその地方公共団体との合意により複数の税率の中から税率が決定された税については、当該複数の税率のうち最も低い税率等を上回る部分は外国法人税に該当しない。

24-10-4 我が国の所得税法に規定する外国税額控除において税負担が一定以上に高率な部分については、控除対象外国所得税の額に該当しない。
















24-10-1 我が国の外国税額の控除の態様は、①直接外国税額控除、②間接外国税額控除、③みなし外国税額控除の3つに大別される。このうち、租税特別措置法に規定されていたみなし外国税額控除は、平成21年度改正で廃止された。

 誤り
 外税控除は措置法ではなく(法法69、所法95)、平成21年度改正で廃止されたのは間接外国税額控除である。


24-10-2 外国税額の控除の対象となる税は、租税条約の規定を根拠とし、外国又はその地方公共団体により、法人(個人)の所得に課される税である。

 誤り
 日本国の法令の規定に従い、外国法人税(外国の法令に基づき外国又はその地方公共団体により法人の所得を課税標準として課される税(法法69①、法令141①))及び外国所得税(外国の法令に基づき外国又はその地方公共団体により個人の所得を課税標準として課される税(所法95①、所令221①))が対象となる。


24-10-3 納税者と外国又はその地方公共団体との合意により複数の税率の中から税率が決定された税については、当該複数の税率のうち最も低い税率等を上回る部分は外国法人税に該当しない。

 正しい
 ガーンジー島事件により、外国法人税の範囲(法令141③)が変更された。
 外国又はその地方公共団体により課される次に掲げる税は、外国法人税に含まれないものとする。
三 複数の税率の中から税の納付をすることとなる者と外国若しくはその地方公共団体又はこれらの者により税率の合意をする権限を付与された者との合意により税率が決定された税(当該複数の税率のうち最も低い税率(当該最も低い税率が当該合意がないものとした場合に適用されるべき税率を上回る場合には当該適用されるべき税率)を上回る部分に限る。)


24-10-4 我が国の所得税法に規定する外国税額控除において税負担が一定以上に高率な部分については、控除対象外国所得税の額に該当しない。

 誤り
 法人税は、「その所得に対する負担が高率な部分として政令で定める外国法人税の額」は外税控除の対象となる外国法人税の額から除かれる(法法69)が、所得税にはそのような規定は無い(所法95)。

2012年12月15日土曜日

国際課税ミニテスト(24-9)

 国内法、租税条約、最終的な課税方法の順に述べよ。

 日本法人甲社勤務の日本人会社員は3年間の予定でオランダの甲社ハーグ支店に勤務することとなった。この間、日本にある自宅は甲社に賃貸しており、年間240万円の家賃収入がある。当該会社員は日本にPEを有しない。
 なお、日蘭租税条約は、OECDモデル租税条約第6条(不動産所得)と同様の規定を有する。















 国内法では、会社員が受領する不動産賃貸収入240万円は不動産の賃貸料等(所法161三)に該当し、国内源泉所得に当たる。

 一方の締約国の居住者が他方の締約国内に存在する不動産から取得する所得に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。(日蘭租税条約6①)

 従って、租税条約による修正は生じず、当該収入は国内法に従って日本で課税される。当該会社員は日本にPEを有しないが、課税方法は源泉徴収の上で総合課税となる(所法164①四ロ、212①、213①)。

国際課税ミニテスト(24-8)

 国内法、租税条約、最終的な課税方法の順に述べよ。

 イタリア居住者で日本にPEを有しない日本人のサッカー選手が、オフを利用して発泡飲料のCM撮影のために来日し、数日間滞在した後、離日した。なお、選手個人が直接CM出演契約を結んでおり、出演料として5千万円を受領している。
 なお、日伊租税条約は、OECDモデル租税条約第17条(芸能人)と同様の定めを有する。















 国内法では、このCM出演料は人的役務の提供に対する報酬(所法161八)に該当し、国内源泉所得となる。

 演劇、映画、ラジオ又はテレビジョンの俳優、音楽家その他の芸能人及び運動家がこれらの者としての個人的活動によつて取得する所得に対しては、その活動が行われる締約国において租税を課することができる。(日伊租税条約第17条(1))

 従って、租税条約による修正は生じず、このCM出演料は国内法により日本で課税される。当該サッカー選手は日本にPEを有しないので、課税方法は源泉徴収で完結する(所法164①四、212①、213①)。

国際課税ミニテスト(24-7)

 OECDモデル租税条約に関して、適切なものはいくつあるか?

24-7-1 一方の締約国の国民は、他方の締約国において同様の状況にある当該他方の締約国の国民に課される租税等よりも重い租税等を課されることはない。ただし、この定めは一方の又は双方の締約国ので租税条約の居住者のみに適用される。

24-7-2 両締約国の権限ある当局は第25条(相互協議条項)第2項及び第3項の合意に達するため、直接相互に通信することができる。

24-7-3 一方の又は双方の締約国により条約に適合しない課税を受けた者が、自己が居住者である締約国の権限ある当局を通じて、相互協議の申立てをしたときは、当該締約国は他方の締約国との合意により、解決が義務付けられる。

24-7-4 二国間の権限ある当局が相互に満足すべき解決を図ることができない場合には、国際司法裁判所に解決を委ねることになる。















24-7-1 一方の締約国の国民は、他方の締約国において同様の状況にある当該他方の締約国の国民に課される租税等よりも重い租税等を課されることはない。ただし、この定めは一方の又は双方の締約国ので租税条約の居住者のみに適用される。

 誤り
 第24条 無差別取扱い
1 一方の締約国の国民は、他方の締約国において、特に居住者であるか否かに関し同様の状況にある当該他方の締約国の国民に課されており若しくは課されることがある租税若しくはこれに関連する要件以外の租税若しくはこれに関連する要件又はこれらよりも重い租税若しくはこれに関連する要件を課されることはない。この1の規定は、第1条の規定にかかわらず、いずれの締約国の居住者でもない者にも、適用する
 第1条 人的範囲
 この条約は、一方又は双方の締約国の居住者である者に適用する。


24-7-2 両締約国の権限ある当局は第25条(相互協議条項)第2項及び第3項の合意に達するため、直接相互に通信することができる。

 正しい
 第25条 相互協議
4 両締約国の権限のある当局は、2及び3の合意に達するため、直接相互に通信することができる。


24-7-3 一方の又は双方の締約国により条約に適合しない課税を受けた者が、自己が居住者である締約国の権限ある当局を通じて、相互協議の申立てをしたときは、当該締約国は他方の締約国との合意により、解決が義務付けられる。

 誤り
 第25条 相互協議
1 一方の又は双方の締約国の措置によりこの条約の規定に適合しない課税を受けたと認める者又は受けることになると認める者は、当該事案について、当該一方の又は双方の締約国の法令に定める救済手段とは別に、自己が居住者である締約国の権限のある当局に対して又は当該事案が前条1の規定の適用に関するものである場合には自己が国民である締約国の権限のある当局に対して、申立てをすることができる。当該申立ては、この条約の規定に適合しない課税に係る措置の最初の通知の日から3年以内に、しなければならない。
2 権限のある当局は、1の申立てを正当と認めるが、自ら満足すべき解決を与えることができない場合には、この条約の規定に適合しない課税を回避するため、他方の締約国の権限のある当局との合意によって当該事案を解決するよう努める。成立したすべての合意は、両締約国の法令上のいかなる期間制限にもかかわらず、実施されなければならない。


24-7-4 二国間の権限ある当局が相互に満足すべき解決を図ることができない場合には、国際司法裁判所に解決を委ねることになる。

 誤り
 第25条 相互協議
5 当該者が要請すれば、当該事案の未解決の事項は、仲裁に付託されなければならない。

2012年12月14日金曜日

国際課税ミニテスト(24-6)

 OECDモデル租税条約に関して、適切なものはいくつあるか?

24-6-1 配当所得については、その配当を支払う法人の居住地国(源泉地国)での課税を認めるが、その限度税率は親子間配当の場合は高く設定されている。

24-6-2 利子所得については原則として使用地主義を採用している。

24-6-3 一方の締約国で生じた他方の締約国の居住者が受益者である使用料は、受益者の居住地国のみで課税することができる。

24-6-4 一方の締約国の居住者が他方の締約国にPEを有する場合、そのPEが保有する事業用資産の譲渡収益については、当該他方の締約国で租税条約の限度税率まで課税することができる。















24-6-1 配当所得については、その配当を支払う法人の居住地国(源泉地国)での課税を認めるが、その限度税率は親子間配当の場合は高く設定されている。

 誤り
 親子間配当の場合は低く設定されている。
 第10条 配当
1 一方の締約国の居住者である法人が他方の締約国の居住者に支払う配当に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。
2 1の配当に対しては、これを支払う法人が居住者とされる一方の締約国においても、当該一方の締約国の法令に従って租税を課することができる。その租税の額は、当該配当の受益者が他方の締約国の居住者である場合には、次の額を超えないものとする。
 a 当該配当の受益者が、当該配当を支払う法人の発行済株式の25パーセント以上を直接に所有する法人(パートナーシップを除く。)である場合には、当該配当の額の5パーセント
 b その他のすべての場合には、当該配当の額の15パーセント


24-6-2 利子所得については原則として使用地主義を採用している。

 誤り
 債務者主義
 第11条 利子
1 一方の締約国内において生じ、他方の締約国の居住者に支払われる利子に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。
2 1の利子に対しては、当該利子が生じた締約国においても、当該締約国の法令に従って租税を課することができる。
5 利子は、その支払者が一方の締約国の居住者である場合には、当該一方の締約国内において生じたものとされる。


24-6-3 一方の締約国で生じた他方の締約国の居住者が受益者である使用料は、受益者の居住地国のみで課税することができる。

 正しい
 第12条 使用料
1 一方の締約国内において生じ、他方の締約国の居住者が受益者である使用料に対しては、当該他方の締約国においてのみ租税を課することができる。


24-6-4 一方の締約国の居住者が他方の締約国にPEを有する場合、そのPEが保有する事業用資産の譲渡収益については、当該他方の締約国で租税条約の限度税率まで課税することができる。

 誤り
 限度税率はない
 第13条 譲渡収益
2 一方の締約国の企業が他方の締約国内に有する恒久的施設の事業用資産を構成する動産の譲渡から生ずる収益に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2012年12月9日日曜日

国際課税ミニテスト(24-5)

 適切なものはいくつあるか?

24-5-1 租税条約の規定で租税を「課すことができる。」という文言の意味は、当該租税条約の規定が国内法の課税根拠規定に変換されることであり、「課税する。」ということである。

24-5-2 条約相手国の居住者が、租税条約に基づき我が国での課税の免除・減免を受けようとする場合、その支払を受ける日の前日までに、直接、所轄税務署長に対して「租税条約に関する届出書」を提出しなければならない。

24-5-3 国内法と租税条約において、所得源泉地が異なる場合には、我が国では国内法の規定にかかわらず租税条約に規定するところによるものとしている。

24-5-4 日米租税条約に規定されているトリーティショッピング(条約漁り)防止規定はOECDモデル租税条約に基づき盛り込まれたものである。















24-5-1 租税条約の規定で租税を「課すことができる。」という文言の意味は、当該租税条約の規定が国内法の課税根拠規定に変換されることであり、「課税する。」ということである。

 誤り
 国内法の税率と、租税条約の制限税率のどちらか低い税率で課税できるという意味である。国内法上課税とならないものについて、租税条約のみにより新たに税を課すことはできない。


24-5-2 条約相手国の居住者が、租税条約に基づき我が国での課税の免除・減免を受けようとする場合、その支払を受ける日の前日までに、直接、所轄税務署長に対して「租税条約に関する届出書」を提出しなければならない。

 誤り
 源泉徴収義務者を通じて所轄税務署長に提出(実特法3の2、実特規2、9の5)


24-5-3 国内法と租税条約において、所得源泉地が異なる場合には、我が国では国内法の規定にかかわらず租税条約に規定するところによるものとしている。

 正しい
 租税条約に異なる定めがある場合には、国内法上の国内源泉所得を租税条約上の国内源泉所得に読み替える(所法162、法法139)。


24-5-4 日米租税条約に規定されているトリーティショッピング(条約漁り)防止規定はOECDモデル租税条約に基づき盛り込まれたものである。

 たぶん正しい
 特典制限条項(LOB:Limitation On Benefits)のことだと思われるが、詳細は不明

国際課税ミニテスト(24-4)

 適切なものはいくつあるか?

24-4-1 内国法人とは、国内に住所又は管理支配の場所を有する法人である。

24-4-2 外国法人とは外国に管理支配地のある法人をいう。

24-4-3 ある事業体が外国法人に該当するかの判定は、設立準拠法の施行地国の法令にしたがって法人所得税を納める義務の有無により判断する。

24-4-4 我が国の所得税法の規定によれば、外国法人に対し、同法第161条第1号の2から第7号、第9号から12号の国内源泉所得の支払をする者は、支払の際、これらの国内源泉所得について所得税を徴収し、国に納付しなければならない。

24-4-5 租税条約上の「居住者」、「非居住者」は、我が国の税法上、「居住者及び内国法人」、「非永住者、非居住者及び外国法人」に対応する。















24-4-1 内国法人とは、国内に住所又は管理支配の場所を有する法人である。


 誤り
 内国法人とは、「国内に本店又は主たる事務所を有する法人」(所法2①六、法法2三)を指す。
 一方の締約国の居住者とは、「一方の締約国の法令の下において、住所、居所、事業の管理の場所、その他これらに類する基準により当該一方の締約国において課税を受けるべきものとされる者」(OECDモデル租税条約4①)を指す。


24-4-2 外国法人とは外国に管理支配地のある法人をいう。

 誤り
 外国法人とは、「内国法人以外の法人」(所法2①七、法法2四)を指す。


24-4-3 ある事業体が外国法人に該当するかの判定は、設立準拠法の施行地国の法令にしたがって法人所得税を納める義務の有無により判断する。

 誤り
 「ある事業体を我が国の税務上、外国法人として取り扱うか否かは、当該事業体が我が国の私法上、外国法人に該当するか否かで判断する」(「米国LLCに係る税務上の取扱い」)

24-4-4 我が国の所得税法の規定によれば、外国法人に対し、同法第161条第1号の2から第7号、第9号から12号の国内源泉所得の支払をする者は、支払の際、これらの国内源泉所得について所得税を徴収し、国に納付しなければならない。

 正しい
 厳密には誤りであるが、基本的には所法212①の通りである。


24-4-5 租税条約上の「居住者」、「非居住者」は、我が国の税法上、「居住者及び内国法人」、「非永住者、非居住者及び外国法人」に対応する。

 誤り
 租税条約上の「居住者」は、我が国の税法上、「居住者、非永住者及び内国法人」
 租税条約上の「非居住者」は、我が国の税法上、「非居住者及び外国法人」
 「非永住者」は、居住者のうち一定の者を指す(所法2①四)

国際課税ミニテスト(24-3)

 適切なものはいくつあるか?

24-3-1 居住者は全世界所得に対して課税され、課税方法は総合課税のみである。

24-3-2 非永住者は国内源泉所得以外の所得のうち、我が国で支払われ又は我が国に送金されたものに対しても課税され、支払の際に源泉徴収の対象となる。

24-3-3 PEを有しない非居住者に支払う所得税法第161条第1号の2から12号に掲げる国内源泉所得は、源泉徴収の対象となる。

24-3-4 PEを有しない非居住者は、国内源泉所得以外で国内払い又は我が国に送金されたものについては、総合課税を受ける。















24-3-1 居住者は全世界所得に対して課税され、課税方法は総合課税のみである。

 誤り
 居住者(所法2①三)は、利子所得、配当所得、給与所得、退職所得、雑所得(年金)、報酬・料金、が源泉徴収の対象となる所得の典型例である。


24-3-2 非永住者は国内源泉所得以外の所得のうち、我が国で支払われ又は我が国に送金されたものに対しても課税され、支払の際に源泉徴収の対象となる。

 誤り
 非永住者 (所法2①四)は、「国内源泉所得及びこれ以外の所得で国内において支払われ、又は国外から送金されたもの」(所法7①二)が課税対象であり、所得税の納付義務を負っている(所法5①)。
 一方、源泉徴収義務者となるのは、源泉徴収(第四編)に規定する支払をする者である(所法6)。仮に「国内において支払われたもの」(所基通7-3)であり、支払者が「国内において支払をする者」に該当するとしても、主権侵害となることから国外滞在者に対しては課税権を行使できず、結果として源泉徴収義務を負わない。故に、非永住者が確定申告をすることになる。


24-3-3 PEを有しない非居住者に支払う所得税法第161条第1号の2から12号に掲げる国内源泉所得は、源泉徴収の対象となる。

 誤り
 国内にPEを有しない非居住者の源泉徴収対象は、所得税法第161条第1号の3から12号である(所法212①)。


24-3-4 PEを有しない非居住者は、国内源泉所得以外で国内払い又は我が国に送金されたものについては、総合課税を受ける。

 誤り
 非居住者(所法2①五)は、国内源泉所得が課税対象(所法7①三)であり、所得税の納付義務を負っている(所法5②)。「国内源泉所得以外の所得」=「国外源泉所得」(所令222③、法令142③)となることから、国内源泉所得以外に対しては所得税の納付義務を負わない。

2012年12月8日土曜日

国際課税ミニテスト(24-2)

 適切なものはいくつあるか?

24-2-1 我が国の締結した多くの租税条約は、二重課税の調整、脱税及び租税回避への対応等を通じ、二国間の健全な投資・経済交流の促進に資するものである。

24-2-2 二重課税に対処する制度として、いわゆるタックスヘイブン対策税制、移転価格税制、過少資本税制などがある。

24-2-3 非居住者・外国法人に対する支払で国内源泉所得に該当するものについては、全て源泉徴収の対象となる。

24-2-4 国内に恒久的施設(PE)を有している非居住者・外国法人は、租税条約に関わらず、全ての国内源泉所得について申告義務がある。

24-2-5 租税条約の規定により、我が国のタックスヘイブン対策税制の適用が制限されると判断した最高裁判決がある。














24-2-1 我が国の締結した多くの租税条約は、二重課税の調整、脱税及び租税回避への対応等を通じ、二国間の健全な投資・経済交流の促進に資するものである。

 正しい
 この通りである。


24-2-2 二重課税に対処する制度として、いわゆるタックスヘイブン対策税制、移転価格税制、過少資本税制などがある。

 誤り
 いずれも租税回避を防止する制度であり、二重課税を排除する制度としては、外国税額控除や外国子会社配当益金不算入制度がある。


24-2-3 非居住者・外国法人に対する支払で国内源泉所得に該当するものについては、全て源泉徴収の対象となる。

 誤り
 国内源泉所得のうち1号所得は源泉徴収の対象とならない(所法212①)。
 厳密には、PEのない非居住者の1号の2所得も対象外となる。


24-2-4 国内に恒久的施設(PE)を有している非居住者・外国法人は、租税条約に関わらず、全ての国内源泉所得について申告義務がある。

 誤り
 非居住者・外国法人が1号PEを有する場合には、国内法(所法164①一、法法141一)は総合主義(entire income principle)であり、PE帰属の有無を問わず全ての国内源泉所得が総合課税の対象となる。
 一方、OECDモデル租税条約を含め、日本が締結している全ての租税条約は帰属主義(attributable income principle)であり、PEに帰属する国内源泉所得のみが総合課税の対象となる。
 租税条約に異なる定めがある場合には、国内法上の国内源泉所得を租税条約上の国内源泉所得に読み替える(所法162、法法139)。


24-2-5 租税条約の規定により、我が国のタックスヘイブン対策税制の適用が制限されると判断した最高裁判決がある。

 誤り
 制限されないという最高裁判例(平成21年10月29日平成21年12月4日)がある。

国際課税ミニテスト(24-1)

 適切なものはいくつあるか?

24-1-1 我が国では、居住者及び内国法人の課税対象を全世界所得としているため、国外源泉所得について国際的二重課税が生じるが、国ごとに取扱いの偏りがあるわけではないので、経済的な問題は生じない。

24-1-2 海外取引の担当者は、租税条約についての知識は特に必要ない。

24-1-3 国際的二重課税の排除の方法として、我が国では外国税額控除方式のみを採用している。

24-1-4 我が国の外国税額控除方式は、居住者又は内国法人の所得税額又は法人税額のうち全世界所得に占める国外所得金額の割合を基に計算した金額を限度として、納付した外国所得税又は外国法人税の額を、その年分又は当該事業年度の所得税又は法人税の額から控除する制度である。

24-1-5 外国税額控除方式は国外所得免除方式に比べて属地主義的である。














24-1-1 我が国では、居住者及び内国法人の課税対象を全世界所得としているため、国外源泉所得について国際的二重課税が生じるが、国ごとに取扱いの偏りがあるわけではないので、経済的な問題は生じない。

 誤り
 国際的経済活動に対する障害のみならず、投資や経済活動に対する税制の中立性を阻害している。


24-1-2 海外取引の担当者は、租税条約についての知識は特に必要ない。

 誤り
 経理担当者のみならず、海外取引担当者も租税条約の基本事項は知っておくべきである。


24-1-3 国際的二重課税の排除の方法として、我が国では外国税額控除方式のみを採用している。

 誤り
 国外所得免除方式である外国子会社配当益金不算入制度(法法23の2)が存在する。


24-1-4 我が国の外国税額控除方式は、居住者又は内国法人の所得税額又は法人税額のうち全世界所得に占める国外所得金額の割合を基に計算した金額を限度として、納付した外国所得税又は外国法人税の額を、その年分又は当該事業年度の所得税又は法人税の額から控除する制度である。

 正しい
 法令142①・所令222①の通りである。厳密には、居住者と異なり内国法人は「外国法人税が課されない国外源泉所得」の調整(法令142③)等が必要である。


24-1-5 外国税額控除方式は国外所得免除方式に比べて属地主義的である。

 誤り
 国家の課税権を属人的にとらえて、居住者や内国法人の全世界所得に対する税額から外国税額を控除するのが「外国税額控除方式」である。投資を国内で行うか国外で行うかについての選択に課税が影響を及ぼさず、「資本輸出中立性(CEN:Capital Export Neutrality)」を有している。
 一方、課税権を属地的にとらえて、国外に源泉のある所得を課税の対象から除外するのが「国外所得免除方式」である。国外から投資を行う者は、進出先である源泉地国において課税を受けるのみであり、進出先での競争条件が他社と比べて不利にならない(居住地国で高率課税等を受けない)ため、「資本輸入中立性(CIN:Capital Import Neutrality)」を有している。
 CENは、居住地国において、源泉地国が国内であろうと国外であろうと、所得を区分せず課税するため、海外進出を妨げない(居住地国からみて平等)。CINは、源泉地国において、居住者・内国法人であろうと、非居住者・外国法人であろうと、源泉地国で得た所得に対しては、源泉地国でのみ課税するため、居住地国がどこであろうと源泉地国で競争条件が不利になるわけではない(源泉地国からみて平等)。

2012年12月2日日曜日

評判悪い大阪国税局、今年はさらに対応悪化も

2012年11月27日

 12月の税務年度末に向け、関西では「大阪国税局の税務調査が、来年一段とひどくなる」(製造業関係者)と懸念する声が広がっている。大阪から本社流出が続き、大阪国税局管内で法人所得税を納付する企業が減少、存在意義をかけ税務調査が厳しくなってきた。

「大阪国税局が嫌いだから本店を移したい」

 今年10月に新日鉄住金が誕生したことで旧住友金属工業の本社が消失、また一つ大阪から有名企業がなくなり、シャープ、パナソニック、関西電力など名だたる企業が赤字で税収の大幅減少も見込まれている。「大阪国税局の調査姿勢は関西経済の地盤沈下に拍車をかける遠因と言われてきた」(財界関係者)だけに、2013年の税務調査姿勢が懸念されている。

 「大阪国税局の税務調査の態度がひどく、それが理由で本店登記を移したいと思った」。

 あるメーカー関係者はこう話す。日本の税法解釈はグレーゾーンが多く、追徴課税を受けた企業が「見解に相違があったが、応じた」とコメントすることが少なくないが、この企業は「もめたくないので追徴に応じたのにマスコミにリークされた」と憤る。

 別のサービス業の場合は負い目に付け込まれた。「うちの税務処理そのものが正しくなくて、徹底的な調査を受けたが、『不正の一部を海外がからむ取引に付け替えてくれ』と国税局職員に依頼された」という。

 海外がからむ「移転価格税制」の問題では、大阪国税局に巨額の追徴を受けた武田薬品工業やカプコンが異議を申し立て、税が還付されたことが記憶に新しい。不正内容の付け替えを税当局が依頼する背景には、海外案件での不正を暴くことが、各国税局の評価対象になっているからなのかもしれない。

 大阪国税局職員の態度が悪いことが広く知られたのは、海運大手、川崎汽船(本店・神戸市)に対する問題だった。

恫喝、そして誘導

 同社は、2009年までに約64億円の申告漏れを指摘され重加算税など約19億円を追徴課税されたが、その税務調査が「威圧的、誘導的だった」ことが、2011年12月の大阪国税不服審判所の判断で明らかになった。そして、所得隠しと判断された約16億円分が取り消された。

 これも、海外がからむ取引だった。同社の海外子会社が船舶を購入した際、「鋼材価格が高騰したため、上昇分の約16億円を上乗せして再契約した」と主張したが、国税局側は「再契約自体が虚偽」とし、所得を圧縮するために経費を水増しした所得隠しと判断した。

 国税職員が同社社員から聞き取りを行った際、「威圧的に言われ、国税局の主張に沿う内容の確認書に押印させられた」「『そのまま書いて』と職員が作った文に署名するよう誘導された」という。

 審判所は、「威圧、誘導的な手法に訴えたとうかがえる」と認定する一方、「再契約は事実」として同社の主張を認めた。「大阪国税局がやりそうなこと」と、マスコミにリークされたことを憤るメーカーの関係者はいう。

 外資メーカーの税務担当者も大阪国税局職員に恫喝されたと話す。この企業の場合、税務調査された伝票の一部で処理の間違いを指摘され、「『その伝票が属しているグループの100枚すべてが間違っていると認めろ』と言われた」という。「『100枚すべてを調べなおし、正しく処理し、申告しなおします』と言うと、国税職員はぶち切れ、『なら、あと半年居座って調査してやる』と怒鳴った」と話す。

 大阪国税局職員の評判には驚くばかり。関西経済が冷え込む中、来年の税務調査の態度は心配される一方である。

2012年10月3日水曜日

退職金~異議結果~

臨時教員への退職手当、課税を撤回 兵庫の4税務署

 「退職」と「任用」を毎年繰り返す臨時教員への退職手当をめぐり、兵庫県の4税務署が県教委に、源泉所得税を納めるよう納税告知処分を行った問題で、4税務署は1日、処分をすべて取り消す異例の決定をした。同様の手当は兵庫のほか東京、愛知、大阪、岡山、福岡など33都府県にあり、県教委の異議に対する初判断が注目されていた。

 税務署側は6月、2007~10年度に県教委が臨時教員延べ1530人に支払った退職手当にかかる源泉所得税と、ペナルティーにあたる不納付加算税計1574万3千円を納めるよう告知。県教委は8月15日付で、4税務署に異議を申し立てた。

 臨時教員は地方公務員法上、1年を超えて任用できないため、同じ人を継続的に任用する場合、県教委は1日以上の「空白」を置いて再び任用する形を取ってきた。そのたびに月給の6割にあたる平均約15万円の退職手当を払っている。

 税務当局は、この退職は形だけで、実態は「継続雇用」にあたると判断。退職手当は所得税法上の優遇措置がある「退職所得」ではなく、課税対象の「給与所得」にあたるとみて、納税を求める処分を下した。

 今回の処分を取り消した異議決定書で税務署側は、再任用を希望する教員のすべてが必ずしも再任用されるわけではない▽取得されなかった年次有給休暇は、再任用時に繰り越されない▽再任用までの期間は兵庫県職員としての身分を有していない――などの事実関係を列挙。「単なる任用関係の延長ではなく、実質的にも別の新たな任用関係と認められる」とし、実態的にも「退職所得」に該当するとの初判断を示した。

 国税庁によると、昨年度に処理した異議申し立ては全国で4511件。このうち、原処分をすべて取り消したケースは、1%に満たない44件しかない。

 兵庫県教委教職員課の担当者は「継続任用とみるのは、法的に不可能とする主張が全面的に認められた」と安堵(あんど)した様子。一方、兵庫県の税務署を管轄する大阪国税局の国税広報広聴室は「個別案件に関するお答えは差し控える」としている。(日比野容子)



臨時教員退職金:非課税 兵庫4税務署、処分取り消し
毎日新聞 2012年10月02日 大阪朝刊

 任期1年で退職と再任用を繰り返す臨時教員への退職手当について、兵庫県内の4税務署が「給与所得にあたる」として、県教委に源泉所得税などの納付を求めた納税告知処分に対し、県教委が異議を申し立て、税務署側が1日、処分を取り消したことが、県教委への取材で分かった。臨時教員への退職金支給制度は大阪など34都府県にあり、課税の可否が注目されていた。

 地方公務員法により臨時教員は1年を超えて雇用できないため、県教委は任期1年で採用。再任用までに数日の空白期間を置き、任期が終わるごとに平均約15万円の退職手当を支払っている。手当分は制度ができた1962年以降、実質非課税の退職所得として処理してきた。

 しかし、07〜10年度に延べ1530人に支払った退職手当について、姫路税務署など4税務署が今年6月、「雇用の継続性が認められる」として給与所得と判断。源泉所得税と加算税計約1574万円の納付を求めた。県教委は「1年を超える継続雇用は法的に認められていない」などとして異議を申し立てていた。税務署側は審理の結果、希望者全員が再任用されるわけではないことなどから、再任用は新たな任用と判断した。【近藤諭、牧野宏美】



4税務署、処分取り消し

 兵庫県教委が臨時教員に支払った退職手当は課税対象の給与に当たるとして、県内の姫路、豊岡など4税務署が2007~10年度の延べ1530人分の源泉所得税など計約1570万円を支払うよう県教委に告知した処分について、税務署側が「手当は退職に伴う所得」として、1日付で処分を取り消していたことがわかった。

 県教委は「税の公平性に反する」と4税務署に異議を申し立てていた。

 県教委などによると、臨時教員は地方公務員法上、任期は1年以内だが、満了後に数日空けて、再び採用される場合が多いという。その際、一人当たり平均約15万円の退職手当が支払われており、課税対象の給与ではなく、退職所得とみなされて、非課税だった。

 この点に着目した姫路税務署などが県教委に対し、臨時教員の再任用は「実質的には継続雇用で、退職手当は給与」と判断。不納付加算税を加えて、6月に納税告知を通知した。県教委は全額を立て替え、納付したが、8月に異議を申し立てていた。

 4税務署がこの日出した異議決定書などによると、「再任用を希望する教員全員が再び採用されるわけではない」とする県教委の主張を受けるなどして、再任用は新たな任用関係として「継続雇用」を否定。手当は「退職所得」と認めた。

 県教委の退職手当制度は1962年から始まり、同様の制度は兵庫以外に33都府県にあるが、今回の納税告知処分は全国で初めてだった。
(2012年10月2日 読売新聞)



国税側が課税処分取り消し 臨時教員の退職手当めぐり 軍配は兵庫県教委に

 大阪国税局管内の税務署が兵庫県教委に対し、臨時教員の退職手当をめぐり、源泉所得税を納めていないとして納税告知処分を出したところ、県教委側が猛反発、税務署側は1日、県教委側の異議申し立てを認め、処分を取り消した。国税当局が課税処分を取り消すのは極めて異例。納税告知処分をめぐっては、他の33都府県の教育委員会も同様の手当を非課税扱いで支給しており、国税当局の判断が注目されていた。

 県教委によると、臨時教員の任期は原則1年間。地方公務員法上、1年を超えて任用できないためで、多くが満了後に1日以上空けて再任用されているという。満了時に平均約15万円支給されている退職手当は、所得税が控除される「退職所得」として実質的に非課税扱いだった。

 しかし、今年6月、兵庫県の姫路、豊岡、柏原、洲本の4税務署が、「臨時教員の多くは毎年、再任用を繰り返しており、実質的には継続雇用に当たる」と指摘。非課税扱いの退職所得ではなく、課税対象の「給与所得」に該当すると判断し、県教委が平成19~22年度に臨時教員延べ1530人に支払った退職手当について、源泉所得税と不納付加算税計約1575万円を支払うよう県教委に納税告知処分を行った。臨時教員の退職手当に対する納税告知処分は全国初という。

 これに対し県教委は、同様の手当がある大阪府教委など33都府県ではいずれも退職所得として扱われていることから、「税の公平性に反する。もし課税するなら全国一斉にすべきだ」と反論。処分を不服として、8月15日付で各税務署長に異議を申し立てていた。

 税務署側が1日、県教委に通知した異議決定書によると、臨時教員は再任用の際に有給休暇は繰り越されない上、任用満了後、再任用までの期間は県職員としての身分を有していないなどと指摘。「再任用は単純な任用の延長ではなく、実質的にも別の新たな任用と認められる」と、県教委側の主張を全面的に認めた上で、処分の全部を取り消した。

 県教委は「当初の主張が認められた」と歓迎の意向を示した。4税務署を管轄する大阪国税局は「個別の事案なのでコメントできない」としている。

 国税局や税務署による課税処分に不服がある場合は、処分の取り消しなどを求めて国税局か税務署に異議申し立てができ、国税局や税務署が内部で処分の妥当性を改めて判断する。

 国税庁によると、平成23年度の異議申し立ての処理件数は4511件で、そのうち申立人の主張が一部認められたのは331件。全部認められたのはわずか44件だけで、全体の1%にも満たない。

2012年9月23日日曜日

退職金~退職所得か給与所得(賞与)か~

臨時教員に課税論争 兵庫、再任用前に毎年退職手当

 「退職」と「任用」を毎年繰り返す臨時教員への退職手当をめぐり、兵庫県教委と税務署の間で、異例のバトルが起きている。「実質的には継続雇用であり、退職手当とはいえない」とする税務署に対し、「現行の法を順守した結果」と反論する県教委。同様の手当を持つ全国の教育委員会が、行方を見守る。

 「兵庫県教委は1574万3千円を支払え」

 臨時教員の源泉所得税を納めていないとして6月下旬、県教委に納税告知書が届いた。県内21税務署中、姫路など4署からで、ペナルティーにあたる不納付加算税約139万円を含む。

 滞納を指摘されたのは、2007~10年度に県教委が臨時教員に支払った退職手当にかかる源泉所得税で、延べ1530人分。

 臨時教員は地方公務員法上、1年を超えて任用できない。不安定な身分の固定化を避けるためとされる。だから同じ人を継続的に任用する場合、県教委は1日以上の「空白期間」を置き、再び任用する形を取る。そのたびに月給の6割にあたる1人平均約15万円の退職手当を払ってきた。

 今回、税務当局はこの手当に目を付けた。退職は形だけで、実態は継続的な任用だから、退職手当は所得税法上の優遇措置のある「退職所得」ではなく、課税対象の「給与所得」にあたる、とみたのだ。

 そもそも「退職所得」とは何か。兵庫県を管轄する大阪国税局は「長期間、勤務してきたことに対する報償たる性質をもち、多くの場合、老後の生活の糧(かて)」とする最高裁判例(1983年)を挙げる。

 一方の県教委は、臨時教員は1年を超えて任用できないと法で定められている以上、1年を超える実態があるからといって「継続任用」とみることは、法的に不可能との立場だ。

 県教委によると、今の制度は50年前の1962年にできた。この間、税務署側の指摘はなかった。同様の制度はほかに東京、愛知、大阪、岡山、福岡など33都府県にあるが、処分例はない。県教委は「税の公平性に反する」などと、4税務署に異議を申し立てた。

■人余り避ける「調整弁」

 臨時教員は、教員免許は持っているが採用試験に合格していない人らが登録し、教育委員会が雇う。正規教員の産休や育休、病欠時などに代役を務める。

 しかし近年、自治体の財政難などを背景に、本来の「臨時」という姿が変容しつつある。

 文部科学省によると、小中学校の常勤の臨時教員数は05年度に4万8339人だったが、11年度には6万2131人に。教員全体に占める割合も7.1%から8.9%に増えた。

 団塊の世代が大量退職する半面、少子化は進む一方だ。正規採用で穴埋めすると、将来的に教員余りが起きかねないとして、臨時教員が“調整弁”として雇われている現状がある。

 臨時教員は学級担任や部活動も持つなど、基本的な仕事内容は正規教員と同じだ。しかし兵庫県の場合、同じ40歳でも臨時は正規より月給が7万~10万円安いなどの格差があるという。

 兵庫県教委の担当者は「数学など教員数が少ない教科もあり、過疎地では特に、同じ人を継続的に雇用しなければ、法定の教員数を満たせない」と話す。

■「正規採用なら退職手当なんていらない」 保証なき臨時の悲哀

 「裏付け教員」

 臨時教員は以前、こんな呼ばれ方をしていた。正規教員が出産や病気で休んでも、職場復帰を保証する教員という意味だ。

 「おれってやっぱり、『裏』なんやなあ」

 兵庫県内の小学校に勤める男性教諭(46)がそう実感したのは、大学を卒業後、臨時教員として働き始めて3年半ほどたった時のことだ。年度末に校長から「4月以降も引き続き、いてほしい」と言われていた。しかし結局、臨時教員の口は来なかった。

 日雇いのガードマンをして暮らした。ある日、春まで担任していた子どもにばったり出くわした。

 「先生、その格好、どうしたん?」

 返す言葉がなかった。

 5年間で七つの小学校を転々とし、7回目の挑戦で採用試験に合格。正規教員になって17年たった今でも、臨時教員の時の気持ちは忘れられない。いつクビになるかわからず、人生設計も立てられない。

 「税務署の投じた『一石』が、せめて、臨時教員のあり方にメスを入れることにつながってほしい」

 税務署の処分にも憤りを感じる。「喜んでクビになり、喜んで退職手当をもらう臨時教員などいない。正規教員として雇ってくれれば、そもそも退職手当なんていらないのです」(日比野容子)

2012年9月20日木曜日

改正国税通則法

税務調査、増す説明責任 追徴課税の理由も-改正国税通則法、来年1月完全施行
    2012/9/20 1:11

 税務調査の手続きを定めた改正国税通則法が来年1月に完全施行され、調査の事前通知や追徴課税の理由説明が原則義務化される。「突然調査に来られて困った」「十分な説明なく追徴課税を受けた」といった納税者の不満を受け、国税当局に一層の説明責任が課された形。国税庁は職員研修などで対応を急ぐが、現場には「調査件数が減る」などの懸念もある。

 国税通則法の大幅改正は1962年の制定以来初めて。ポイントの一つは税務調査前に調査の日時などを納税者に連絡する「事前通知」の原則義務化だ。

 これまでも8割以上の調査で事前通知をしていたが、通知するかしないかは現場の裁量に委ねられていた。調査を受けた経験がある都内の会社社長は「いきなり数人の税務職員が押しかけてきて驚いた」と振り返り、「仕事の調整のためにも、事前の連絡が増えるとありがたい」と話す。

 法改正により事前通知の内容も調査対象の税目や期間、帳簿まで広がった。ただ、証拠隠滅などが疑われる場合は、今後も事前通知無しで調査できるとされている。

 調査で申告漏れなどが発覚し追徴課税(更正処分)する際、原則として全ての納税者に課税理由を説明するよう義務付けたことも大きな改正点。従来は「追徴課税の件数が多く、事務作業が膨大になる」などとして説明を省くこともあり、弁護士などから「納税者にとって不利益な処分なのに、きちんと理由を示さないのはおかしい」と批判が出ていた。

 税務に詳しい弁護士は「法改正で国税側からの情報開示が広がり、課税に不服がある場合も反論しやすくなる」と歓迎。別の中小企業経営者は「これまでは渋々指摘に応じることもあったが、今後は納得するまで説明を求めたい」と話す。

 ある国税職員は「これまでは追徴課税の理由説明について現場に大きな裁量があり、多少根拠が弱くても説得して課税処分を行うケースもあった」と振り返る。

 国税庁は「改正法の下での業務に一日も早く慣れる必要がある」(同庁幹部)と、8~9月に全国約5万6千人の全職員が参加する研修を実施。10月から施行後と同様の業務を前倒しで始める方針だ。

 ただ、事前通知や課税理由の説明などで事務作業は増える見込みで、職員からは「調査件数を減らさざるを得ない」との声も。国税OBの税理士は「細かい事前通知は調査前に手の内を明かすようなもの。これまで通りに申告漏れや所得隠しを突き止められるのか」と懸念していた。

▼国税通則法 修正申告や課税処分など各税に共通する 事項を定め、「税法の一般法」とも呼ばれる。「税務調査の手続きの法整備が遅れている」という日本弁護士連合会などの声を受け、民主党政権下の2011年 11月に改正された。一部は既に施行され、事前通知などの規定は13年1月に施行される。
 強制調査権のある査察部の調査・処分の手続きは国税犯則取締法に別途定められている。

2012年9月9日日曜日

大阪酷税局

税務調査で「威圧と誘導」 川崎汽船の調査で、不服審判所認定

2012/9/7 23:02

海運大手の川崎汽船(本店・神戸市)に対する大阪国税局の追徴課税処分を取り消した大阪国税不服審判所が、国税局職員の税務調査に「威圧や誘導があった」と裁決で認定していたことが7日、分かった。

関係者によると、同社はパナマの子会社が船舶の建造を造船所と契約した後、鋼材価格が高騰したため再交渉して約16億円を上乗せすることで合意し、経費計上した。

大阪国税局は税務調査で、再交渉の合意の事実はなく、経費の水増しで所得隠しに当たると判断。2010年6月、この約16億円を含む約64億円の申告漏れを指摘したが、同社は処分を不服として審判所に審査請求した。

審判所は昨年12月の裁決で、調査に当たった国税職員が見立てに沿うような確認書を作成し、一部事実に反する内容の回答をさせたり、隣室の会議に支障が出るほどの怒鳴り声を発したりしたと認定。再交渉の合意は事実と認めて処分を取り消した。

大阪国税局は「個別事案はコメントできないが、納税者の主張を正確に把握し、適正な課税に努めたい」としている。



大阪国税局が「威圧・誘導」 不服審判所、川崎汽船の主張認める

2012.9.7 20:05

海運大手「川崎汽船」(神戸市)が大阪国税局から平成21年までに約64億円の申告漏れを指摘され重加算税など約19億円を追徴課税されていた問題で、大阪国税不服審判所が同国税局による税務調査の手法について「威圧・誘導的だった」と認定していたことが7日、分かった。審判所は昨年12月、同社の主張を認め、所得隠しと判断された約16億円分を取り消した。

関係者によると、海外子会社が船舶を購入した取引について、同社は「鋼材価格が高騰したため、上昇分の約16億円を上乗せして再契約した」と主張。一方、国税局側は「再契約自体が虚偽」と指摘し、所得を圧縮するために経費を水増しした所得隠しと判断した。

同社は不服として審判所に審査請求。国税職員が同社社員らから事実関係を聞き取った確認書を作る際に「威圧的に言われ、国税局の主張に沿う内容の確認書に押印した」「『そのまま書いて』と国税職員が作った文案のまま署名するよう誘導された」と主張した。

審判所は、国税局側の認識に沿うよう確認書を作った▽一部事実に反する回答をさせた▽隣室の会議に支障をきたすほどの怒声を発した-と指摘。「威圧・誘導的な手法に訴えたとうかがえる」と認定する一方、「再契約は事実」として同社の主張を認めた。

川崎汽船は「コメントできない」。同国税局は「税務調査では納税者の主張を正確に把握し、的確な事実認定に基づいて適正な課税に務めたい」としている。



大阪国税職員が威圧、誘導=川崎汽船の調査で-不服審判所が認定

大阪国税局が海運大手「川崎汽船」(東京都千代田区)に約16億円の所得隠しを指摘した税務調査で、大阪国税不服審判所が「威圧や誘導」などがあったと認定していたことが7日、分かった。
同国税局は2010年6月、同社に対し、09年3月期までの5年間で約64億円の申告漏れを指摘。このうち約16億円は、パナマにある子会社が意図的に経費を水増ししたと判断した。川崎汽船は指摘を不服として申告漏れ全額の取り消しを求め、同審判所に審査請求した。
審査の過程で、川崎汽船側は国税局職員が調査の際、怒鳴り声を上げたり、見立てに沿うよう同社従業員を誘導したりしたと主張。同審判所は昨年12月、これを認めた上で、「契約後に原材料費が高騰し、再契約した」とする同社の主張も認め、所得隠しとされた16億円分の処分を取り消し、重加算税約6億円が同社に還付された。(2012/09/07-16:41)



大阪国税が威圧調査 不服審「怒声、回答誘導」

大阪国税局が海運会社大手・川崎汽船(本店・神戸市)に約16億円の所得隠しを指摘したことについて、大阪国税不服審判所が全額を取り消した裁決で、「国税局職員が税務調査の際、従業員に対し、威圧・誘導的な手法に訴えた」と認定していたことがわかった。審判所が税務調査の不当性を認めるのは極めて異例という。

関係者によると、同国税局は2010年6月、同社に対し、09年3月期までの5年間で約64億円の申告漏れを指摘。うち16億円はパナマの子会社が経費を水増しするなどしており、悪質な所得隠しと判断した。同社は重加算税を含む約19億円を全額納付したが、処分を不服として、同審判所に審査請求した。

審査の中で、同社側は「国税局職員がどなったり、回答を誘導したりした」などと主張。同審判所は昨年12月の裁決でこれを認め、「怒声を発し、従業員に事実と反する回答をさせ、国税局側の認識に沿うような書面を作成した」などと認めた。また、所得隠しとされた16億円については「鋼材価格が高騰し、契約を見直していた」と同社側の主張を採用し、処分を取り消した。

同国税局は「個別事案はコメントできない。今後は納税者の主張を正確に把握し、適正な課税に努めたい」としている。

◆国税不服審判所 国税局や税務署による課税や差し押さえなどの処分に対し、納得できない納税者が処分の取り消しなどを求めた時、その妥当性を審理する国税庁の機関。審判官は双方の主張を聞くなど調査し、裁決する。東京の本部のほか、全国に12の支部と7支所が設けられている。
(2012年9月8日 読売新聞)



大阪国税局が威圧調査 不当性認め所得隠し指摘取り消し

2012年9月7日

大阪国税局が海運大手の川崎汽船(神戸市)に約16億円の所得隠しを指摘した税務調査で、大阪国税不服審判所が、国税職員の聞き取りに「威圧や誘導」があったと判断していたことがわかった。見立てに沿うよう同社従業員らに回答させた国税局の調査は根拠がないとして、約16億円全額を取り消し、確定した。国税局の調査の不当性が、国の機関である審判所から指摘されるのは極めて異例だ。

国税局は2010年6月、同社に対し、09年3月期までの5年間で約64億円の申告漏れを指摘した。このうち、パナマの子会社が日本の造船会社から船舶を買った際、「鋼材価格が高騰したため、契約を見直して上乗せした」として払った約16億円を、悪質な所得隠しと認定した。契約を見直した事実はなく、経費の水増しとの判断だった。

同社はこれを不服として審判所に審査請求。国税局の担当職員が川崎汽船や造船会社の従業員らを調べた際、「(従業員らと合意した事実関係を記す)確認書を作る時、威圧的に言われ、国税局の主張に沿う内容の確認書に押印した」「『そのまま書いて』と、国税職員が作った文案のまま確認書に署名するよう誘導された」「『この回答は違う』『この会社は法人の体をなしていない』と怒鳴られた」などと訴えた。