2012年9月20日木曜日

改正国税通則法

税務調査、増す説明責任 追徴課税の理由も-改正国税通則法、来年1月完全施行
    2012/9/20 1:11

 税務調査の手続きを定めた改正国税通則法が来年1月に完全施行され、調査の事前通知や追徴課税の理由説明が原則義務化される。「突然調査に来られて困った」「十分な説明なく追徴課税を受けた」といった納税者の不満を受け、国税当局に一層の説明責任が課された形。国税庁は職員研修などで対応を急ぐが、現場には「調査件数が減る」などの懸念もある。

 国税通則法の大幅改正は1962年の制定以来初めて。ポイントの一つは税務調査前に調査の日時などを納税者に連絡する「事前通知」の原則義務化だ。

 これまでも8割以上の調査で事前通知をしていたが、通知するかしないかは現場の裁量に委ねられていた。調査を受けた経験がある都内の会社社長は「いきなり数人の税務職員が押しかけてきて驚いた」と振り返り、「仕事の調整のためにも、事前の連絡が増えるとありがたい」と話す。

 法改正により事前通知の内容も調査対象の税目や期間、帳簿まで広がった。ただ、証拠隠滅などが疑われる場合は、今後も事前通知無しで調査できるとされている。

 調査で申告漏れなどが発覚し追徴課税(更正処分)する際、原則として全ての納税者に課税理由を説明するよう義務付けたことも大きな改正点。従来は「追徴課税の件数が多く、事務作業が膨大になる」などとして説明を省くこともあり、弁護士などから「納税者にとって不利益な処分なのに、きちんと理由を示さないのはおかしい」と批判が出ていた。

 税務に詳しい弁護士は「法改正で国税側からの情報開示が広がり、課税に不服がある場合も反論しやすくなる」と歓迎。別の中小企業経営者は「これまでは渋々指摘に応じることもあったが、今後は納得するまで説明を求めたい」と話す。

 ある国税職員は「これまでは追徴課税の理由説明について現場に大きな裁量があり、多少根拠が弱くても説得して課税処分を行うケースもあった」と振り返る。

 国税庁は「改正法の下での業務に一日も早く慣れる必要がある」(同庁幹部)と、8~9月に全国約5万6千人の全職員が参加する研修を実施。10月から施行後と同様の業務を前倒しで始める方針だ。

 ただ、事前通知や課税理由の説明などで事務作業は増える見込みで、職員からは「調査件数を減らさざるを得ない」との声も。国税OBの税理士は「細かい事前通知は調査前に手の内を明かすようなもの。これまで通りに申告漏れや所得隠しを突き止められるのか」と懸念していた。

▼国税通則法 修正申告や課税処分など各税に共通する 事項を定め、「税法の一般法」とも呼ばれる。「税務調査の手続きの法整備が遅れている」という日本弁護士連合会などの声を受け、民主党政権下の2011年 11月に改正された。一部は既に施行され、事前通知などの規定は13年1月に施行される。
 強制調査権のある査察部の調査・処分の手続きは国税犯則取締法に別途定められている。

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